Fate/stay night&Melty Blood 発表記念
空想科学月姫 番外編
新キャラ「Sion Eltram Atlasia」の武器についての一考察

 

 

 

 

 さて今回、8月3日発売のカラフルピュアガールにて、TYPE-MOON特集として新作記事が載ったわけですが、そこで明らかになったMelty Bloodの新キャラ、Sion Eltram Atlasia(シオン・エルトラム・アトラシア、以下シオン)について、その謎の一部を明らかに出来たら、と思います。

 

 

 まずは人となり。シオンは格闘もこなす錬金術師で今回は「吸血鬼(真祖)の研究」と題して来日。アルクェイドと関係を持つ志貴に接触し、協力を要請するという人物です。
 そして何より僕が気になるのが、その「武器」です。記事によるとシオンは

「電脳ハッカーならぬ霊子ハッカーであり、エーテライトと呼ばれるモノフィラメントによって対象の脳とリンク、情報の引き出しを可能としている。」

とあります。

 さてここで重要な言葉を上げるならば「霊子ハッカー」「エーテライト」「モノフィラメント」「脳とリンク」でしょうか。その実体を少しずつ検証しながら、どんな武器なのかを類推しようと思います。

 まずは物質名と思われる「エーテライト」。調べるからに現在そのような物質はありませんでした。では何かの言葉の組み合わせかと考えると、まず浮かぶのは化学物質である「エーテル(ether)」でした。「etherite」と書けばエーテライトでしょうか?

 エーテルとは有機化学では非常に基礎的な物質です。炭化水素基に酸素原子が結びついたもので、代表的なものはエチルエーテルがあり、溶媒(物質(溶質)を溶かす液体)として主に用いられる、とあります。

 さらにここで次の言葉「モノフィラメント」を絡ませると、この発想が上手くいきそうな気がします。モノフィラメントとはモノ=単一の、フィラメント=連続した長い繊維状のもの、とあるからです。

 まずは単一物質で繊維が作れるかと言う話ですが、これは非常に簡単です。例えば炭素繊維、もっと有名なモノと言えばストッキングの原料であるナイロン、ラップなどに使われるポリエチレンなどの化学繊維がそうです。

  エーテルの凝固点、つまり固体になる温度というものは大概がマイナス20度以下であり、常温では決して固体になり得ないどころか、エーテルは非常に揮発性が高くすぐに気体なってしまいます。さらに麻酔性も持っているので、自分が一番側にいると頭がぼーっとして、能力を発揮できない可能性もあります。

 しかし、化学反応を使えば繊維にすることは可能です。ポリエーテル(ポリ=沢山の、高分子化合物の接頭語)というのは、現実に存在します。これは非常に有用な物質で、代表とも言えるポリエーテルケトン(PEK)は溶融成形が可能で、かつ難燃性、耐熱水性、耐放射線性、耐薬品性、耐疲労性も非常に良好、とあります。これを使えば、強度が多少心配ですが鞭のようなワイヤーを作ることなど簡単でしょう。

 しかし、それだけでは更に次のキーワードにあるように「脳とリンク」することが出来ません。ただのビニールワイヤーを使って他人の脳に干渉することなど出来ましょうか。もし出来るならば、我々は実はビニール紐でも意志の疎通が出来てしまうのかも知れません(糸電話を除いては)。

 ここで、現実のエーテルによるモノフィラメントの可能性は絶たれてしまいました。

 ではどうしたらいいのかと考えますと、実はもう一つ「エーテル」と呼ばれていたものがあります。それは光を伝搬する物質と考えられていた「エーテル」です。

 水の中を我々が泳ぐように、地球もまた宇宙に満たされているエーテルの海を泳いでいる、などと19世紀には思われていました。その当時、音は空気を媒質として伝搬すると同じく、光や電磁波のようなものの伝搬はエーテルが媒質となっていると思われていました。

 しかし、詳細は割愛しますが19世紀末に「マイケルソン・モーレーの実験」によってエーテルを測定しようとしたところ、逆にエーテルの存在が否定されてしまいました。これは、実は後に「光速度不変原理」、更には「相対性理論」の足がかりとなった、非常に現代科学にとって有意義な実験だったといえます。

 さて、現実では存在を否定されてしまったエーテルですが、未だに何故か生きています。それは主にオカルトの世界です。例えば人魂、幽霊、エクトプラズム……我々の常識を越えた何か、と言うモノはなかなか説明のいかないものです。

 そこで颯爽と登場するのがエーテルなのです。何せ未だ実体の解明されていない物質(ということになっている)故に、様々なモノに形を変えることが出来るのです。それが先程上げた何か、ということです。

 ここでもう一度キーワードを眺めると「霊子ハッカー」というのがあるではないですか。ということで考えました。このエーテライトというのは、いわゆるオカルト的なエーテルを何かしら使った物質であると。そしてモノフィラメントも、このことで解決します。エーテルという単分子結晶を固く細く引き延ばしてワイヤー状にすれば、画面写真で彼女が銜えているようなものになり得るでしょう。

 さて最後のキーワードですが「脳とリンク」になります。これもエーテルという非常に都合のいい物質のおかげで難なく解決してしまいます。

 よく幽霊話で「幽霊が肩を叩いた」とあります、同時に「幽霊が私の身体を通り抜けた」とも。仮にこれがエーテルという同一物質であるのならば、エーテルはその存在もかなり自由に変化させることが出来るのでしょう。

 ここでは、有能な霊子ハッカーでもあるシオンの思念によって、エーテライトは自由にその姿を変えられるとしましょう。すると、先程まではモノフィラメントとして鞭の様に固く、しなやかに振る舞っていたエーテライトが、突然人体をすり抜ける物質となり得るのです。

 そうしてワイヤー状のエーテライトは人間の脳に直接的に接触して、脳内を流れる電気信号を解読することで、自分の脳に絡まるエーテライトから他人の情報を得ることが出来る、という理論が導けてしまいます。(もちろんエーテルは電気もよく通す導電体なのです!)

 こうして結論が得られました。エーテライトとは現代科学では解明できない未知の物質である、と言うことです。

 

 

 如何だったでしょうか? 今回は雑誌から得られた非常に少ない情報、そして浅い僕の知識を総動員して理論を展開してみました。いつものようにSSではないのは、シオンの性格というモノがつかめないので、キャラクターとしてお話を書けないと言うのもありますが、なにより論文調の方が書きやすかったからなのです。

 エーテルという言葉から、気付けば化学・物理学・そして疑似科学? ともいえる超常現象まで非常に多岐に渡る展開をみせました。まさかこのような形でエーテルを思い出すことになろうとは、思いも寄りませんでした。そしてオカルトな話をすることも……

 実際Melty Blood が出てみないとこの理論が正しいのか、それとも全然的外れなのか分かりません。しかしとりあえず、僕はこの考えで色々妄想を膨らませていきたいと思います。

 最後に、「幽霊が脳に直接話しかけてきた」というお話も、きっとエーテライトが脳に直接リンクされ、有能でない霊子ハッカーが自分の情報を相手に漏洩させてしまった結果なのかも知れませんね。

(02.08.04)