しようよ?

 

*まず、こちらを了解の上でお話をお読み下さい。*

大前提:自分的「さっちんシナリオ」後のお話。
基本的にアルクェイドルートに準拠してロアを撃破しているが、志貴はさっちんと結ばれている。
アルクェイドとさっちんは、志貴の『精』を力の源(血を吸う代わり)として摂取している。
アルクェイドは『わたしはさっちんの次に愛してくれればいいよ』とあっけらかんとしていて、
さっちんも『みんなが幸せの方が嬉しいな』と志貴が二人(もしくはそれ以上)を愛する事を喜んでいる。
お互いはそんなお互いが大好きで、アルクェイドとさっちんは今や唯一無二の親友になっている。

*そんな感じで、お楽しみ下さい*

 

 

「おはよ〜、志貴」

 ドアが開くと、アルクェイドはいつも通りニコニコと笑って俺を出迎えた。
「さ、どうぞ〜」
「はいよ。おじゃまします、っと」
 言われるまでもなく靴を脱ぐと、俺はアルクェイドの部屋に上がった。

 なんだかんだで、この部屋も両手両足の指じゃ数えられない位やって来ている。今日も朝食が終わる時間を見計らったかのように電話がやってきて、
『志貴〜、遊びにきて〜』
 とアルクェイドが言ったから、特に用事もなかった俺はここにやってきた訳だ。ちなみに、今日は土曜日だから学校はさぼりじゃない。流石にアルクェイドもこの時代に慣れてきたらしく、その辺は考えているらしい。

「にゅふふ〜」
 アルクェイドがこっちを見て変な笑いを浮かべている。
「なんだよ、気持ち悪いぞ」
「えへへ〜」
 こういう時のこいつは何を企んでるか分からない。アレが食べたい、ここに行きたいとか、いいように振り回されるのがオチだ。
「やっほ〜、志貴が来たよ〜」
 アルクェイドが俺より先に部屋に入る。
 そんな後ろ姿を見て、誰がいる訳でもないのに、妙に楽しそうだなあと思いつつ俺も部屋の仕切をくぐった。と、
「あ、おはよう志貴くん」
「ん?」
 先客は本当にいた。
「さつき?」
 間違うわけないけれど、さつきだ。
 テーブルで、のんびりとお茶を飲んでいたらしい。
 なんかアルクェイドの部屋にさつきってのが珍しいのでちょっと突っ立っていると、
「はいはい、志貴も座って。紅茶でいい?」
「ん? ……ああ、自分でやるよ」
 アルクェイドに席を勧められるが、ひらひらと手を振ってそれを遠慮した。
 俺はキッチンに向かうと、すっかり配置を覚えてしまった食器棚から自分専用のそれを取り出す。
 湯飲みと急須に茶筒。
 こんな所でも日本茶、だったりする。

「にしても、意外と言えば意外な感じがするなあ」
「そう?」
 煎れてきたお茶をすすりながら、そんな事を呟いてみる。
 アルクェイドはそう感じてないようだけど、今まで記憶の中でこの部屋で三人が一堂に会した事は……あれから無い気がする。
 確かに一時期は、三人でずっと一緒にいたような気がする。というかいた。でも大体は街中とか、そういった所で会うのが殆どだったから、こうして部屋の中でのんびりとするのは妙な感じだ。

「昨日はさっちんとお泊まり会だったんだよ、ねー?」
「うん。一杯お話ししたよね?」
「そうそう、気が付いたらもう寝る時間だったし、早かったなあ」
「へえ……」
 ニコニコと笑って話す二人は、まるで同い年のお友達だ。さつきは当たり前だけど、一緒にいるアルクェイドは子供っぽいと言うか、まんま女子高生だ。
 まあ、アルクェイドはそれくらい無邪気で楽しくやってるみたいだから、こいつの過去とか考えると文句なんか言えないよなと思う。

「あれ? もしかして志貴も誘って欲しかった?」
 アルクェイドが反応の薄い俺を見て意地悪そうに言うが、
「だめだめ。女の子同士のお泊まり会に、志貴みたいな男の子は参加できないんだから、ね?」
 勝手にそうやって話を進めると、さつきを見て笑った。
「ふふふ。ごめんね、志貴くん」
「ん? いや、別に気にしてないよ」
 さつきも口ではそう言っている割に楽しそうな顔だ。
 まあ、女の子同士話す事ってのは沢山あるだろうから、そこに俺がいるのも野暮ったいだけだろう。
 それに、夜出かけたりすると相変わらず秋葉がうるさいし。いい加減何とかならないかなあと思うけど、あれが秋葉なんだろうからなあと遠く考えてしまった。

「で、今日はどんなご用ですか?」
 俺は湯飲みに口を当てつつ、既に諦めきった感じでアルクェイドに尋ねる。
 いつまでもこうやってのんびりお茶をするのも別に構わないが、アルクェイドがそんなためだけにわざわざ俺を呼ぶとは思えない。
 まあ、休日だしどっか連れてけ、ってとこだろうな。ある程度予想は付いている。
「うん、そうそう」
 が、ぱんと手を合わせてアルクェイドは笑うと、それから突然とんでもない事を言った。

「志貴、えっちしよ?」
「……!?」

 青天の霹靂とはこういう事を言うのだろう。飲み込もうとしていたお茶が見事に気管に入って、思わず声にならないむせ返りを起こしてしまった。
「げほげほっ……くはっ」
「だ、大丈夫……?」
 苦しみながら咳をする俺をさつきは心配そうにしてくれたが、アルクェイドはきょとんとした顔で俺を見ている。
 そんな姿に思わずジト目でそいつを睨んだ。
「……おまえ」
「え、わたし?」
「自分の言ってる事、分かってるのか?」
「うん。えっちしよー」
「……」
 口から声にならないへろへろの溜息が出てしまう。
 だめだ、なんていうか天然って恐ろしいと改めて思った。

 そんな俺を見たからか、アルクェイドはわざと頬を膨らませ、『怒ってるんだぞ〜』というような風にすると、今度は急にニヤリと笑って、
「だってー、最近志貴わたしにえっちしないで、さっちんとばっかりえっちしてるんだもん」
「な!?」
 またとんでもない、しかし確かに事実である事を述べたから急にドキッとしてしまった。
「昨日ね、本人からいっぱい聞いちゃったんだから。ね、さっちん?」
「え……?」
 その言葉に、アルクェイドの言う『本人』の方へ視線を向けると……

「……」

 当然というか何というか、顔を真っ赤にしているさつきがいる訳で。
 さつきは俺と視線が合うと、
「……あ、あのね、楽しかったんだけど、ちょっと眠かったし……。ほら! キャンプの時とか修学旅行とか、みんなで布団に入ると好きな子の話とか、志貴くんもしたでしょ?」
 わたわたと手を大げさに振ってまで必死に言い訳をする。
 そんなさつきは普段なかなか見られる姿じゃない。うん、やっぱりさつきはどんな姿も可愛いなあとついつい頬が緩むが、何か違う。
 怒るつもりは全くないよ、でも恥ずかしいじゃないか……という視線でさつきを見つめた。
「それと一緒で、でもわたしたちはその、つきあってるから、そういう話になって……うぅ、ごめんなさい志貴くん……」
 最後の方は顔を真っ赤にさせて俯いてしまうさつきの肩を、アルクェイドはぽんぽんと叩いた。
「でもさっちん、嬉しそうにいっぱい話してくれたよね? そこまで聞くつもりじゃなかったけど、わたしまで恥ずかしかったんだから」
「うう、だってだって……アルクェイドさんのバカ……」
 そこだけは予想通りというか、どうやら素直なさつきはアルクェイドの誘導尋問に乗っかってしまったらしい。
「ゴメンね、だってわたし志貴しか知らないから、えっちの時他の人はどうなのかな、って興味があって」
「わたしだって一緒だよぉ……志貴くんとしか、えっちしたことないんだから……」
 頬を染めるふたりの会話は、何て言うか男冥利につきるというか、聞いているこっちまで恥ずかしくなる。こう目の前で男性経験が云々と、それはマジでヤバイ。

「あ、の……」
 放っておかれ気味に感じて何とか口を挟むが、アルクェイドはそんな俺を見るとにぱっと笑って、
「だから、えっちしたいの、志貴」
 そう言われたからたまらない。声をかけたのが逆効果で、なんだか自ら虎穴に入ってしまった感じだった。
「だからって……」
 理屈が通ってない気がして、だけどすっかりこっちまでそんな気分になってきてしまった俺が言葉を選びあぐねていると、

「うん、志貴とわたしと、さっちんで。三人でしよっ?」
「え!?」

 アルクェイドは、とんでもないことを言いやがった。
「ちょ、ちょっと待て!」
「えー?」
 流石にそれは薄々予想して……夢みたいだって思って、何とか必死に抑えようとしていたのに、なんでこうもこいつはあっさりと言ってしまうのだろう。
「志貴、ずるいよ。わたしたちのこと囲っておいて、一緒じゃイヤなの?」
 アルクェイドはからかうように、誘うように俺を見ながらそんなことを言う。でもその瞳は、実はかなり真剣な様に見えた。
「い、あ……」
「ね、さっちんからも言ってやってよ?」
 その瞳に魅了されそうになっていると、いつまでも何も言えない俺に業を煮やしたか、アルクェイドがさつきにきゅっと抱きついた。
「きゃっ……」
「ねー、昨日約束したんだもんね?」
「さ、つき……?」
 抱きつかれたさつきは、一瞬驚いてアルクェイドの方を見るが、俺の視線を感じるとそれこそ顔が真っ赤になりながらこっちを見返してくる。
 そんなさつきがあまりに可愛くて、心臓が高鳴っていくのが自分でも分かる。
「うん……あのね、志貴くん……」
 さつきはそこまで言ったところで俯いてしまう。それだけだって充分反則で、もうおかしくなりそうだって言うのに、
「わたしも……アルクェイドさんと一緒に、志貴くんと気持ちいいことしたい……んだ」
「……」
 その言葉に、ごくりと唾を飲み込んでしまった。
「ね、さっちんも志貴にして貰いたいんだよ?」
 アルクェイドは絶句する俺を見ると改めて促し、それからふふっと笑った。

「わたし達をこんな体にした責任、取って貰うんだから」

 それが、俺の中で何かが壊れる最後の一言となった。
 額に手をやると、俺は苦笑いするしかなかった。
「……ったく、それを言われると自業自得なんだろうな」
 そうひとりごちて、目の前の愛しいふたりを交互に見つめた。
 誘ったのはあっちだけど、改めて意思を確認する。
「ふたりとも、覚悟は出来てるよな?」
「もちろん」
「……いいよ」
 それぞれに頷く姿を見て、迷いとか色々吹っ切れたような気がした。こちらも何だかこれからのことを考えると、よこしまな思いも色々あって、にやけた笑顔になってきてしまう。

「でも、志貴ってえっちの時、いつもケダモノになるのよね〜。わたしが怖がるくらいだもん、さっちんは大丈夫?」
「うん……でも、志貴くんいっぱい優しくしてくれるから……」
「そうなのよね〜。いつも終わった後に頭とか撫でられると、あんなにいじめられたのに胸がきゅうんってなっちゃって、どーしようもなくなっちゃうし……」
「わたしも志貴くんに抱きしめられたら、全部許せちゃうんだよね……ずるいなあ、志貴くんは……」

 しかし、それ以上に二人の話は俺の心をえぐっていくからたまったものじゃない。
「やめてくれ。本当に恥ずかしいから……」
 話を止めさせようとするが、
「えー。自分がやってることなのに〜」
「もしかして志貴くん……無意識なの?」
「ええっ!? もしそうだったら天性の才能っていうか……とんでもない彼氏持っちゃったね、わたしたち?」
「そうかも……志貴くんの……えっち」
「うあ、あー……」
 全く逆効果だった。

 だめだ、このふたりを一緒に相手すると、何をやっても裏目に回るらしい。あっちもあんなことを言うが、こちらもとんでもない彼女を持ってしまったらしい……それはそれで嬉しいけど。

「じゃ、みんな納得いったみたいだし、早速始めようよ!」